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2023年3月29日
山暮らし
東京都
内子町
“田舎”の暮らしを学び、暮らしやすい里山を自分の手でつくる。
(名前) 岡山紘明さん (職業) 「どい書店」店主

のどかな里山に囲まれ、歴史のある建物や伝統産業が息づく愛媛県内子町。岡山紘明さんは、東京大学大学院生のとき、内子町の山奥にある小田地区と出会い、移住しました。古民家活用、食のブランディングといったまちづくりに取り組む岡山さんを取材しました。

元気のある“田舎”に希望と危機感を抱く

松山市の中心部から車で1時間ほど走った先に、清流がはぐくむ里山・小田地区はあります。岡山さんがこの地を初めて訪れたのは2017年。東京大学の大学院生として都市計画を学び始めて、まもなくのことでした。

「所属していた研究室が、内子町の歴史的な建物や産業などの調査をすることになり、僕も興味があって参加しました。山奥なのに家や畑がしっかり残っていることに感動したのを今でも覚えています」

兵庫県神戸市のニュータウンで育った岡山さん。ただ、母方の実家が岡山県の農村地域だったこともあり、“田舎”の雰囲気は肌感覚で知っていたといいます。“田舎まち”としての小田の可能性を敏感にキャッチすると同時に、「道ゆけば、腰の曲がったお年寄りもいる。今は元気だけれどこの先どうなるのだろうという“危機感”も感じました」。

可能性と危機感という、相反する受け止め方。それが、岡山さんの中でこれまで感じたことのない衝撃として心に刻まれます。以降、東京から何度も通ううちに、人の温かさや、森や川といった自然とつながる里山の暮らし、地域ごとの風土が伝わる行事など、都会とまったくちがう暮らしのあり方に刺激と癒しを感じるようになります。「障子張り替え一つを取っても、暮らしの中に驚きと発見がありましたね」

岡山さんが学生時代に読み込んだ本たち

明石高専、千葉大学で建築を、大学院で都市計画を学ぶうちに、いろんな教授と出会い、多様な価値観に触れる中で、“生き方や暮らしの本質”とは何かを考えたり、都市や社会への違和感を覚えたりするように。そうして少しずつ積み重なった問いや疑問が、この小田地区で暮らせば、もしかしたら晴れるのではないか…。純粋で、細やかな感性の持ち主の岡山さんの、それは直感のようなものでした。

地域おこし協力隊になり、まちづくりに奔走する。

そうして、大学院を休学し、2,000人ほどが暮らす小田地区に移住。このまちで生きていくために、小田地区のまちづくりを担う「地域おこし協力隊」に応募し、2019年、隊員として活動をスタートします。

協力隊の任期の3年間で岡山さんが行ったまちづくりの成果のうち、シンボリックなものが「旧土居書店」の活用です。およそ築100年の元村長の邸宅は、書店時代を経て、空き家になっていた古民家。“交流の拠点に”と、隊員着任の年にシェアハウス兼貸本スペース「どい書店」をオープンさせます。

岡山さんが発行している小田のフリーペーパー「おだらへん」

どい書店を皮切りに、その後もシェアオフィス、シェアハウス、一棟貸しの古民家宿と次々に空き家・空き店舗を活用。「古民家は、その地域のストーリーのかたまりです。建物の材料はほとんど地元の木材ですし、思い出が住民の人たちそれぞれにあります。売上げや来場者数には興味がなくて、空き家だった建物を人が使っていることにとても喜びを感じます」岡山さんは古民家を活用する理由を、そう語ります。

10棟にもおよぶ活用例を実現した手腕もさることながら、地元の人たちの理解と協力がなければここまでには至らなかったはず。「たくさんの人たちが応援してくれて、僕に活用のチャンスをくれました。とてもありがたいことです」


まちづくりの手法と実績で注目を浴びる岡山さんはほかにも、地元の高校生と一緒に、小田の特産品などを販売するキッチンカーを製作。自らブランディングした棚田米「小さな田んぼ」のおにぎりや地元の人から習った郷土料理などを出張販売。地域をPRすると同時に、まちが存続していくためのなりわいを地道に築いています。

暮らしやすい “田舎”を自分の手でつくる

どい書店がきっかけで、移住してきた仲間と岡山さん

無事に修士論文も書きあげ、大学院、協力隊を“卒業”。「おばあちゃんちよりおばあちゃんち」をコンセプトに掲げるどい書店も、5年目を迎えました。どい書店を拠点にイベントを開催したり、情報を発信したりするうちに、これまで20人近くの若者が小田地区に移住。「僕自身もそうですが、都会の暮らししか知らない若者にとって、小田の暮らしはとても魅力的に感じます。そんな暮らしに憧れる若者が、すでに同年代がいる小田に移り住んできている状況です」と岡山さん。

現在、どい書店を拠点に、喫茶店や貸本などを運営しながら、田舎料理教室や田植え、しめ縄づくりなど、地元の人から暮らしの知恵を学ぶ多彩なイベントも開催しています。 「暮らしの“根っこ”を学ぶことが新鮮だし、都会とは違った暮らし方、生き方もあるよって伝えていきたい。そうして、興味を持った人が小田を訪れて、気に入った人が移り住んだり通ったりしてさまざまな人が行き交うことで暮らしやすいまちにしていきたいですね」愛媛で一番の“田舎まち”を目指し、自分自身が心地よく、呼吸できる暮らしを、地域とともにつくりつづけていきます。

PROFILE
移住先エリア
※移住先周辺の地図であり、正確な場所ではありません。
移住元 東京都
移住先 内子町
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