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家族とともに横浜で長年過ごしていたメロン(リラクゼーションサロンの屋号)さんが、社会人になった3人の子どもたちの生活の“自立”のために選んだのは、自分自身が地方へ移住すること。2021年、宇和島市に移住したメロンさんは、これまで培った仕事のスキルを活かし、新天地で活動の場を広げている。「人生のリセットをした気分です」。健やかな笑顔で語るメロンさんに、移住への道のりと今のことを訊いた。
子どもの“自立”のために、家を出る。
移住した理由を教えてください。
移住を考えるまでは、家族と一緒に25年も住み続けた横浜が、終のすみかだと思っていました。すでに社会人になった男子3人の子どもたちと暮らしていたのですが、将来、子どもたちに負担をかけさせたくなかったですし、このまま私が家にいたら、家から通勤する彼らには自立のチャンスがない。だったら自分が移住して、新しいことにチャレンジしようと決めました。子どもたちに打ち明けたときは、「えっ?!」って驚いていましたけどね(笑)友達にも伝えたら、反対されましたね。でも実際にやってみると、なんとかなるものですよ。
栃木県栃木市に生まれ育ち、筑波大学へ進学するタイミングで茨城へ。東京で就職し、関東を転々としていたが、結婚を機に夫の実家の横浜へ。離婚後も、年子の男の子3人を育てながら、がむしゃらに働き、生きてきた。
移住は、大きな決断でしたね。
これまでの私の人生を振り返ると、大学も就職も“行きたいところ”、“やりたいこと”ではありませんでした。実家を出て、大学に行けば学生生活をエンジョイできると思っていた程度で、進学したのは決して、いきたい大学、学部ではありませんでした。
就職活動をするときはちょうど氷河期の入り口。採用してくれるならどこでもいいという考え方で、受かった会社に入社しました。東京都内で商社の会社員になった後は、当時お付き合いしていた方の都合で、茨城県の人材派遣会社に転職し、営業職に就きました。そんな私にとって、自分の“やりたいこと”がないのが、ずっとコンプレックスでした。だからこそ、移住は大きなチャレンジであり、やりたいことに向き合う大きなチャンスでもあったのです。
確信がないまま、移住先を決める。
愛媛・宇和島を選んだ理由は。
移住してからも、宇和島の人によく聞かれるんですよ。なんで宇和島なんですか?って。もともと四国がいいなとは思っていました。大学時代、四国出身の友人が多くて、みんなとても温かく、素敵な人たちばかりだったので。移住先を決めるにあたって四国各地を回る中で、愛媛の人たちの、穏やかで優しい感じがいいなと感じました。
移住先では、リラクゼーションサロンを開業する予定だったので、大手チェーン店がないエリアという条件でも探しました。人口規模もあり、住みやすそうなまちをインターネットで調べるうちに、宇和島にたどり着きました。
ご自身で移住先を決めたのですね。
「宇和島」という地名はよく耳にしていたので、地方でもそれなりに大きなまちなんだろうと思って。それでも、「これ」という確信があったわけではありませんでした。
実際に住んでみると、食べ物がおいしくて、とても安い。近くに4軒ぐらい鮮魚店があって 250円とかで立派な刺身が買えるんですよ。まちの真ん中に宇和島城があることも気に入っています。暮らしやすいし、人が本当に温かいです。
地方で“パラレルワーク”、の可能性。
メロンさんは現在、女性専門リラクゼーションスペース「メロン館」を自宅で営みながら、オンラインの学習指導、週1回のアルバイトなど、多様な働き方をしている。それは、人とつながりやすく、働く場所と生活の場所が近いからこそ、できること。
リラクゼーションサロンはいつからされているのですか。
横浜にいた頃、生活費のために、本業とは別にリラクゼーションの仕事もはじめました。元々、マッサージが好きで、もみほぐしを学び、駅前の大手チェーン店でたくさんの施術をこなしてきました。
当時と今の違いは。
横浜では、とても大きなサロンに勤めていたので、お客さんから話しかけてこない限りは余計な会話はしない、という雰囲気でした。今のサロンでは、一対一の安心感に包まれながら、身の上話や世間話などいろんな話をします。それがめちゃくちゃ楽しいですし、サービスに対しても、もっとよくしようとかモチベーションも上がります。今、純粋に仕事が楽しいなと思えています。
お客さんもみなさんやさしくて、温かい。「おいしいパンを買ってきたよ」って持ってきてくれたり、「タオルをいっぱい使うでしょ」って洗剤を持ってきてくれたり。厚意がうれしくて、いちいち感激しています。
他のお仕事もされているそうですね。
もう一つ本業が、15年ほど続けている作文の学習指導です。横浜にいた頃、コロナ禍の中で、対面指導からオンライン指導にシフトしていきました。「だったら移住しても仕事ができるじゃん」って思ったのも、移住を後押しした理由です。いま、生徒は東京都内を中心に海外在住まで20人弱です。この時代、どこにいても、これまで培ったノウハウを活かせる仕事ができるんだな、と感じています。
実は、週1回、ケーキ店でアルバイトもしているんです。移住しようと決めてからSNSを始めたのですが、「バイトを探している」とSNSで投稿したら、そのケーキ店から声をかけてもらいました。接客の楽しさも移住してから味わっています。
それにしても、いろんな仕事をされていますね。
一人で子どもを育ててきたので、家計をなんとかしなきゃと思っていろいろと動いてしまうのが身に染みついているかもしれませんね(笑)いろいろ働いてはいますが、横浜時代のように通勤に時間がかかることもないですし、自分の好きなようにスケジュールを組み立てることもできるのでストレスフリーです。
移住して、自分自身ときちんと向き合う。
移住して半年です。決断してよかったですか?
移住は、私にとって、人生のリセットボタンを押したようなものかもしれません。また一からがんばろう!みたいないいスタートを切ることができました。もし環境を変えなかったら、これまでの自分に引き戻されていたでしょうし、こんなに自分自身と向き合うこともできなかったと思うのです。
ご自身の心持ちが変わったのですね。
もともと自己肯定感が低い方だったのですが、移住してからはとても前向きになりましたね。自分をだれも知らないまちにくると、自分自身が「やだな」と思っている面でさえ、忘れて、違う自分になろうと頑張れます。
これまでいろんなことに挑戦しようと思ってやってきたのだけど、今一つ踏み出せませんでした。移住をきっかけに、やりたいことにチャレンジでき、毎日がとても充実しています。これから先の自分がどう変化していくのか、とても楽しみです。