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愛媛県の南西部に位置する西予市明浜地区(せいよしあけはまちく)は、みかんの段々畑とリアス式海岸が美しい海辺の町。大阪の専門学校を卒業後、兵庫県の病院に勤めていた日越恵理子さんは、「大好きなふるさと俵津(たわらづ)を元気にしたい」と、平成24年4月に地元にUターンし、地元の診療所に勤めながら、新しい発想で俵津地区の活性化を目指している。
西予市へUターンするまでの経緯を教えてください。
もともと私は西予市明浜町の俵津地区の出身で、大阪の専門学校卒業後、兵庫県西宮市の病院で病棟クラークとして6年間働いていました。良い上司と同僚に恵まれて、仕事も楽しく充実していたのですが、帰省するたびに、寂れていく故郷のことが気になっていました。20代も半ばになり、大好きな地元のために何かできるのは、若さのある今しかないとUターンを決めました。好きな仕事を辞めるのは迷いもありましたし、周りの人も引き留めてくれましたが、「だめだったらいつでも帰ってきたらいいよ」という上司の心強い言葉のおかげで、踏み出すことができた気がします。元の職場の人とは今でも、何かあったら相談したり愚痴を聞いてもらったり、実家で育てたみかんを送ったりして、交流が続いています。
地元に戻ることに関してご家族の反応は?
両親には、「田舎に帰っても何もないし、働くところもないから帰らなくていい」と反対されました。そう言われていたので私は、ネットなどを使って就職活動していることは、両親には伝えず、ある程度のめどが立ってから報告しました。反対意見ばかり言われると、私の気持ちもブレてしまうと思ったからです。
現在のお仕事はどうやってみつけたのですか?
地元で働くところがあったら帰ろうと思って、まずハローワークに登録しました。ハローワークに登録しておくと、定期的にメールで求人情報が届きます。私は八幡浜管内エリアで登録していたのですが、思っていたよりもいろいろな職種の紹介がありましたね。そこでみつけた地元の診療所での再就職が決まり、翌年の春に帰ってきました。最初は良い仕事がみつかるか心配しましたが、思っていたより早く見つけることができました。
地元に戻って驚いたことはありますか?
地元を離れて進学・就職した都会での8年間の生活は、楽しくて退屈することはありませんでした。地元に帰ってみると、休みの日に遊びに行くところもなく、都会とのギャップに戸惑って、落ち込む時もありましたが、小さい頃からずっと一緒だった同級生が10人くらい残っていて、その仲間がいてくれたので頑張ろうという気持ちになりました。それに、早々に諦めたら、最初に仕事を教えてもらった前の職場の方に申し訳ないという気持ちも支えになりました。
西予市明浜町の魅力を教えてください。
一番好きな場所は野福峠のトンネルを抜けた先に広がる海辺の光景です。都会から帰省するたび、野福峠から、おだやかで清々しい景色を見ると、故郷に帰ってきたという実感で胸がいっぱいになりました。野福峠は桜の名所としても有名で、明浜らしい大好きな場所です。
Uターンして良かったこと、苦労したことは?
都会の生活を経験すると、田舎の閉鎖的で窮屈なところが見えてきて、しんどい時もありました。それでも、仕事場で近所の人に声をかけてもらったりすると、地元に帰ったという安心感はあります。また、青年会や地域の活動に参加することで、いろいろな年代の人とも知り合うことができ、交流が広がっていきました。
地元には飲食店があまりないので、公民館の一角にある「老人クラブハウス」にみんなで集まります。クラブハウスは、いろいろ道具を持ち込んで飲食ができるようになっているので、消防団の集まりや同窓会でも使われている地域の交流拠点です。
青年会での活動について教えてください。
私の地区の青年会では、冬のイルミネーションをはじめ、夏祭りや文化祭の出店、盆踊りなどのイベントを担当していますが、参加は自由です。近隣の地区の青年団では、高齢者の家の網戸の貼り換えや、草刈りなどをしているところもあり、そういった生活支援などで地域に貢献できるような活動も、今後、できたらいいなと思います。
ほかの移住者と交流する機会はありますか?
地元にUターンで帰っている友達は10〜20人ほどいます。青年会でのイベントや打ち上げには、結婚している人や地域おこし協力隊の人も参加してくれて、親しくしています。男女混合のバレーボールチームもありますね。
今後の目標を教えてください。
年に数回しかみかん山の手伝いをしていない私が言うのもおこがましいのですが、今の農業の仕組みや環境を批判するだけで動かなければ、何も解決できません。たとえば、ほかの地区では、都会の百貨店に直接売り込みに行ったり、インターネットを活用して消費者と直接取引をしているところもあります。自分の地区でもそういう流れがうまく作れないかと、いろいろ模索している最中です。まずは現状を知るために、西予市主催の第六次産業を活かすセミナーに参加しています。自分に何ができるか、具体的な方策を持った上で、新しい事業展開を考えていきたいと思っているところです。
西予市明浜地区への移住を考えている方へアドバイスをお願いします。
田舎は閉鎖的で窮屈な面もありますが、若い人は違った考えを持っています。外から来た人でも青年会などに参加すれば、いろいろな交流を通して情報や協力が得られると思います。
私は、20〜50代までの人たちが集まったホームページ委員会で、俵津の情報発信のお手伝いもしています。地区の行事や、公民館だよりなどを載せているので、それを見て、地元に帰るきっかけになればうれしいですね。ホームページは、試行錯誤しながら作っていますが、今まで知らなかった地元の魅力が再発見できて楽しいです。地域に空き家はいっぱいあるので、若い人がもっと増えて、地元に活気が出るとうれしいですね。
日越恵理子さん
平成24年4月、兵庫県西宮市から愛媛県西予市明浜町にUターン
●俵津地区のホームページ
http://www.tawarazu.net