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2021年2月13日
島暮らし
今治市
島の人たちと力を合わせ 瀬戸内海に美しいワイナリーを
川田佑輔さん

ソムリエの資格を持つ川田佑輔さんはワインを愛するあまり、社会人生活を一度中断してワインが学べる山梨大学に入学。在学中に大三島に出合ったことがきっかけで2015年6月に移住し、ワイナリーづくりへの道を歩むこととなった。最初は小さな思い付きだったアイデアは、地元の人たちからの応援を受け、今や支援者500人以上の大プロジェクトに成長を遂げている。

大三島と出合ったきっかけを教えてください。

実を言うと、僕はそれまで「大三島」という島の名前さえ知りませんでした。ですが、知人である建築家の伊東豊雄さんご夫妻がここに別荘を建てると聞き、自分なりに島のことを調べてみたんです。そうすると、「瀬戸内海は日本の地中海」と言われているのに、実はブドウの栽培はあまり行われていないことが分かりました。オリーブや柑橘はあるのにもったいない!

そこで「大三島でワインを作ってみたら面白いのでは?」と伊東さんに話したところ、大変興味を持ってくださったんですね。急遽、その年の2014年8月に今治市伊東豊雄建築ミュージアムの展示でプランを発表することになりました。それに向けての事前調査で、現地に足を踏み入れたのが最初の出合いでした。

それからワイン作りのために移住されたのですね?

はい。最初はまさか現地に住むなんて考えてもいなかったのですが、地元の方や周囲の皆さんのおかげで、ワインのプロジェクトが怒涛のスピードで大きくなりまして――。

僕も本腰を入れるため、山梨大学在学中ではありましたが、翌年の6月に引っ越しました。最初の住まいは市が運営している若者向けの定住促進住宅です。1DKの6畳で、家賃は月に2万2000円だったかな。

あまりの展開の早さに、自分の気持ちが追い付かなかったり焦ったりすることもありますが、今思えばスピード感はやっぱり大事ですね。これは仕事にも移住にも言えると思います。

夏にはここにブドウの美しい棚ができあがる

大三島で生まれるワインは、どんな味になりそうですか?

大三島は水はけのよい真砂土(まさつち)に覆われているので、すっきりとした白ワイン向きです。しかし赤ワインの場合も、酸味があってバランスの取れたボルドーに似た感じに仕上がりそうなので、それはそれで面白いと思います。

また、収穫期である夏に雨が少ない点も非常に有利です。「水分ストレスをかける」といって、実の中の水分を飛ばして味を凝縮することができるんですね。

それにこの畑の樹は、どれも節と節の間が詰まっていて、枝も太いので期待しています。元気でたくさん実が採れるという証拠なんですよ。

現在、園地にはシャルドネとヴィオニエを植えています。試験栽培用も含めると合計32種類約200本となり、今後も増やしていく予定です。

真砂土とは、花崗岩が風化してできた砂のこと
節間が詰まりジグザグに折れ曲がった枝は、健康な苗木の証だ

地元の方もかなり応援してくれているとか?

「大三島みんなのワイナリー」では、皆さんには苗木1本1万円のオーナーとして出資をしていただき、ワインが完成する2020年からは毎年その畑でできたワインをプレゼントすることになっています。

苗木のオーナーさんはすでに募集定員の500人が集まったのですが、その半数近くが島内の方なんですね。応募の紙に「がんばってね」「将来楽しみにしているよ」などと書いてくださっていて、それがすごく励みになりました。何度も読み返してしまいますね。

よその人が何か新しいことを始めても、地元の人にあまり響かないことはよくありますが、ワインに関しては、皆さん期待して応援してくださっているのでありがたいです。それを受け止めてくれるのが、きっと大三島の懐の深さなんですね。

3月19日・20日に行った新植祭。支援者と力を合わせてブドウの苗木を植えた
みんなで植えた試験栽培用の苗木

ワイン作りは大変ですか?

大学在学中にワイナリーで研修はしましたが、ブドウを一から育てるのは初体験。頭では分かっていても、病気など不測の事態に遭遇するとおろおろしてしまいます。なので、他地域のワイナリーさんとか、地元の農家さんと協力したり技術交換をしたりしながら進めています。プロジェクト名も「大三島みんなのワイナリー」なので、たくさんの人が関わりながら1つのワインができればいいですね。

畑は毎日気になって様子を見に来てしまいます。イノシシに枝を倒されていないか、蔓から病気が入り込んでいないかとか、晴れの日も雨の日も関係ありません。「手のかかる子どもがたくさんいる」という感じですが、だからこそ楽しいんじゃないかと思います。

愛おしそうな表情で苗木の枝ぶりを確かめる

その情熱の原動力になっているものは何ですか?

僕はもともとシングルマザーの家庭で、食事はいつも一人で孤独にとっていました。「ご飯を食べる」ということが、そんなに楽しいこととは思っていなかったんです。お酒自体もそれほど好きではありませんでした。

それが、初めてワインがある食卓にご一緒させていただいたときに、世界が変わったんです。ワインが1本あるだけですごく会話も弾むし、雰囲気が全然違う。「食事ってこんなに美味しくて、こんなに楽しいものなんだ!」と、それ以来ワインが好きになり、「いつかワインを作る仕事がしたい」と思うようになりました。

収入はどのように得ているのですか?

「株式会社 大三島みんなのワイナリー」として法人登記したので、伊東さんが代表取締役社長、僕は運営事務局長としてそこからお給料をもらう形になっています。やはりワイナリーともなると、資金も必要だし事業としても大規模。伊東さんの下で修業をしながら、次期社長としての器量を磨かせていただいている最中です。

経営に関しては自分で勉強していくしかないのですが、他のメンバーがそれぞれ何かしらアドバイスをしてくれるので、やっていけそうです。しかし今年の2月は、大学の卒論を書きながら会社の決算書類も準備していたのでなかなかハードでした(笑) お酒が絡むと、法律もややこしくなってくるんですよ。

地元の人とプロジェクトを進める際に意識することは?

なんでも「自分一人で決めてやってはいけない」ということです。木の伐採やブドウの垣根を建てるのも、ほんの些細なことでも島の方に相談することですかね。畑の作業は最初にお手本を見せていただいたほうがスムーズですし、そうすると島の皆さんも僕らが何をやりたいのかをすごく理解してくれるんです。

だからこちらに来てから、「仕事はみんなでやるもの」という意識になりました。相手が困っているときは駆けつけるし、逆も同じ。ときには「もう好きにやらせてよ」ということもありますが、結果的には皆でやったほうがうまくいくような気がします。あとは地元の方たちを大切にする。でないと仕事は始まらないですね。

垣根の杭を打つときにも、島の人にコツを聞く
出番を待つ垣根の部品たち

今後の目標は?

2018年のファーストビンテージは1000本を予定していますが、ゆくゆくは一般販売もしたいです。だいたい1万本を越えないと県外に出すには難しい量なのですが、逆にそこを越えたら小売店や流通にも卸せます。今の畑は0.4ヘクタールほどですが、最終的には2ヘクタールぐらいに増やして2万本とか。そのうち醸造も島で行いたいし、4万本までいけば関西にも流通できるかもしれません。

元・法務局の建物をリノベーションした「みんなの家」では、今年5月から川田さんのソムリエ姿も見られる
この春から、畑に近い借家に引っ越したばかり

島暮らしで苦労している点は?

島内での移動が大変ですね。東京の人から見たら「同じ島内ならどこでも近い」という感覚があるかもしれませんが、実際は「ちょっとそこまで」で往復30分以上かかることもあり、その積み重ねが痛手になることがあります。

あとは……、「出会い」がない(笑) 若い独身の女性が少ないので、我こそはという方は大歓迎です!

移住して新しいことを始めたい人へメッセージを

島の生活は楽しいです。島に来るには相当な決断力もいるし、苦労もあると思います。でも、その決断と苦労に見合った魅力が大三島にはあると思うので、迷っている方はぜひ大三島に来てください!

川田佑輔さん(30歳) 東京でワインのソムリエとして勤めた後、山梨大学の生命環境学部 地域食物科学科 ワイン科学特別コースに入学。在学中に今治市の大三島に移住し、「株式会社 大三島みんなのワイナリー」運営事務局長として日々精力的に活動中。

株式会社 大三島みんなのワイナリー

愛媛県今治市大三島町宮浦5562番 みんなの家2階

TEL080-6946-1787

http://www.facebook.com/ohmishimawine/

PROFILE
移住先エリア
※移住先周辺の地図であり、正確な場所ではありません。
移住元
移住先 今治市
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