自然に囲まれた西条で、築約100年の古民家ライフを満喫
2008-10-03

西日本最高峰の石鎚山(1982m)をはじめとして、雄大な石鎚連峰を背にする「水の都」西条市。
全国一の生産量を誇る裸麦をはじめ、多くの農作物を供給する生産都市として、また瀬戸内の豊かな海が育んだ伝統の海苔や瀬戸内海の魚介類などの水産業も盛んな、人口約11万5千人の都市である。
寺田将人さん、薫さんご夫婦は、平成20年2月から、四国電力株式会社の「古民家再生プロジェクト」愛媛県東予地区第1号として、将人さんの実家で、祖父の代から空き家になっていた母屋をリフォーム、同年4月末完成し、愛知県名古屋市から移住された。
広告代理店勤務を経て、父の郷里で憧れていた農業に挑戦する将人さん、フリーアナウンサーのかたわら、陶芸歴15年の経験を活かし、古民家でとんぼ玉・陶芸教室を始められた薫さんご夫婦にお話を伺った。
―――田舎暮らし、古民家への思いは?
(薫さん)小さい頃私は、鹿児島の豊かな風土で育ちましたので、憧れとか夢ではなく、いずれは小さい頃のように、緑の中で風を感じながら暮らしたいな。という思いはありました。
古民家への思いは、今の家に出会ってからより強くなっていきましたね。
もともと日本のお城や寺社仏閣など古い建築物を見るのが好きで、国宝や重要文化財だと聞くと、あちこち出掛けたりはしていたのですが、まさか、自分が憧れていた日本建築住宅に住めるなんて、思ってもみませんでした。
今住んでいる家は、元々は主人の曽祖父が明治時代に建てた家で、当時空き家になっていたんです。結婚のあいさつに訪れたときに初めてこの家に出会い、「こんなに素敵な家なのに、空き家にしておくのは家がかわいそう!昔のような人の息づかいの聞こえる家にしたい」と。
―――大工さんとの出会いも運命的だったと伺いました。
ちょうど陶芸用の高圧で使う「電気窯」の件で相談していたのが、古民家再生プロジェクトを展開していた四国電力さんだったんです。
工務店の方と初めてお会いして、その人柄、古民家再生に対する考え方に共感し、一通りの要望を伝えてすぐに契約しました。それからは、工事をお願いして一旦名古屋に帰りました。

リフォームの打合せも2時間程度(!)しただけで、着工からほとんどお任せでした。普通は今の材料に取り替えたほうが安上がりだし、大工さんにとっても作業効率が良いのですが、ここに昔からある柱や建具など、あえてそのまま残して欲しい部分も沢山ありました。そんな大工さん泣かせの無理な要望にも共感してもらって。おかげで思いどおりの家にリフォームできました。
―――将人さんはブルーベリー栽培を始められたそうですが。
昔から第一次産業に興味があって、名古屋の会社時代にも、休日には飛び込みで農家訪問などをしていたんですよ。移住する前から(この家の周りは)田んぼばっかりで、人と触れ合いながらできる、何か面白い作物を作ることができないかと思案していました。その田んぼ脇に野いちごが自生しているのを見て、ふと「ブルーベリー」がいけるんじゃないかと。名古屋でもブルーベリー農家と知り合い、草むしりとか植え付けのお手伝いなどを経験していたことも背中を押してくれたような気がします。
これから、この地で色んな人が訪れる、楽しいブルーベリー農園の経営を目指したいですね。
―――もう少し先の移住を考えられていたとか?
最初は農業の研修支援制度がある39歳までには帰ってこようと思っていました。
先に家だけ直しておいて、そのときに備えようと思っていましたが、話を進めるうちに「早く住みたい」という思いが強くなってきました。ちょうど会社の変革期と重なったこともあり、思い切って早期退職しました。いわゆるメタボになりかけていたのも早まった1つの要因かも・・・。こちらに来てから毎日体を動かしていますので、わずか3ヶ月で7キロも体重が落ち、今では農作業で筋肉モリモリ&いかにも健康そうな表情になっています。
―――西条市の印象はどうですか?
まず感動したのは市役所の人の対応が親切だったことなんです。こちらに引っ越してきて、転入届けをもっていったり、年金や、保険の手続きに行く機会が多かったのですが、まるで隣人に接するように、ものすごく親切に相談にのってくださるんです。みなさんの暖かさに感動しましたね。
そして、やっぱり「うちぬき」に代表される水の美味しさでしょう。ご飯もお茶もコーヒーも、味が全く違いますね!
また、西条市は地域の小さなコミュニティを保つのにちょうどいい大きさの町なんじゃないかと思います。山も近いし海も近い(趣味のクロダイ釣りもバイクで5分!)。そういう立地の面でも、ちょうどいい、まとまりやすい大きさの町だと思います。10月には盛大に“西条祭り”が催されるなど、地域住民と一緒になって盛り上がれるイベントが多くあるのも魅力の1つですね。
―――薫さんは陶芸歴15年の腕前とのことですが、新しく始められたとんぼ玉・陶芸教室「長屋敷窯」は地域でも少しずつ認知されているようです。地域との関わりは?


こちらに来てとんぼ玉・陶芸教室「長屋敷窯」を始めました。7月に作品展を開いたんですが、告知もしていなかったのに200人以上の人が来てくれて。
この地域の方々も、私たちのように外部から新しい人が入ってきたら、最初はきっと身構えたと思うんですよ。けれど、昔のままの家を残して、何か新しいことをやっているということで、興味を持って温かく見守ってくれていたように思います。祖父や昔のこの辺りを知っている方が、懐かしさもあって気軽に訪ねて来ていただけるのかなと。
よく知っている人は「ここ台所だったね」と声をかけてくれます。この家が地域の皆さんとの橋渡しをしてくれているような気がしています。この家を建てた曽祖父も守ってきた祖父も、私達を応援してくれているのかな。と。現在は、毎日生徒さんが来られ、いつも賑やかな古民家ライフを送っています。


―――都会の生活と比べて不便だと思うことはありますか?
うーん。特に思い浮かばないなぁ。(笑)。
私(薫さん)は、月に1回、東京で仕事をしているのですが、西条に来てから改めて「あぁ、私には都会の暮らしより、のんびりした生活の方が合っているなあ。」と感じます。都会はたまに行くから新鮮なんですね。
そうそう、西条には松山空港往復の“乗り合いタクシー”っていうのがあって、家の前まで迎えに来てくれるし、帰りも乗客を降ろしながら、家まで送ってくれるんです。ドアtoドアで東京まで行けるんです。
ここに住む前までは、自宅から自転車で駅まで行って電車で大きな駅まで行って新幹線に乗り換えて・・・。と結構時間がかかっていた事を考えると、不便というより、逆に便利になりましたよ(笑)
―――これから西条に移住を考えられている方へアドバイスをお願いします。
私たちの場合は住居、農地や農機具といった問題がクリアされていました。陶芸教室を始めるための建物もありましたし、ここまで条件が良いと、一般的なUターン、Iターンとは違う点が多いとは思います。
ただ、私たちの経験を踏まえると、本当に移住するなら早いうちに!ということを声を大にして言いたいですね。お互いにやりたい事ができる事ほど幸せな事はないと思います。一回きりの人生ですから思いっきり楽しみたいですしね。移住前の口癖は「何とかなるでしょう!」でした。移住してみて、「本当に何とかなるもんだ」って思い始めています。色んな人と出会う事で、仕事の幅も広がり、新たなチャレンジ意欲が沸いたりすることもしばしば。スローライフを想像していましたが、新たな出会いが元でどんどん忙しくなるばかりです。移住前は、ついつい想像が先行してしまいがちですが、現実は色んな人との出会いがあるので、きっと想像していたより色んな事が好転すると思いますよ。
もちろん、住んだことのない土地へ移るわけですから「移住」に対する不安を持っている人は多いと思います。駆け込み寺ではないですが、移住を決めるまでのワンクッションとして、そういった不安を取り除くために少しでもお役にたてればという思いをもっています。
また、古民家に興味を持たれてここに来られた方には、家の内外をお見せするようにしています。西条市にこういった民家が1軒でも多く残るよう、お手伝いができればいいなと思っています。
また、西条市ではIターン・Oターン(都会と西条の両方を拠点とした生活)を推進する取り組みにも積極的です。農地情報をはじめ、農業指導面などのバックアップも充実しています。
農業のみならず、海沿いでは工業も盛んなため就労の面でも不安は少ないと思います。
-PROFILE-
寺田将人さん(36歳)、薫さん(37歳)
2008年に愛知県からIターン
ホームページ(長屋敷窯)
http://nagayashikigama.shironuri.com/ (西条ブルーベリー農園)
http://saijoblueberry.ina-ka.com/ブログ
(西条ブルーベリー農園&古民家再生日記)
http://blogs.yahoo.co.jp/saijoblueberry/MYBLOG/yblog.html(とんぼ玉・陶芸教室 長屋敷窯)
http://blogs.yahoo.co.jp/nagayashikigama/MYBLOG/yblog.html【四国電力㈱ 古民家再生プロジェクト】
ホームページ
http://www.ko-minka.jp/index.htmlブログ
http://cominka.exblog.jp/