『移住体験談』

移住体験談

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“農”業から“脳”業へ。島ごとブランド化を目指して

2008-06-17

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 瀬戸内海に浮かぶ「青いレモンの島」上島町岩城島へ6年前に移住した古川泰弘さん(39歳)。「農業で生計を立てるのは厳しい」といわれる中、岩城村(当時)の研修制度を利用して就農、レモンをはじめとする柑橘や露地野菜を生産・販売する「Blue Lemon Farm」を設立した。“農”業ならぬ、こだわりの“脳”業で島の可能性に賭ける古川さんご家族に話を伺った。

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(積善山の山頂から広島県因島を望む)

 県都松山市から車と船で約2時間。愛媛県の最北端にあたる瀬戸内海に位置する上島町岩城島は、近年は造船関連産業の発展が顕著だが、古くから「青いレモンの島」として農業、漁業を主産業として栄えてきた歴史を持つ。

 京都からたまたま遊びに来た古川泰弘さん(39歳)は、岩城島の雰囲気が気に入り、島で起農を決意。移住に際して必要となる、島暮らしの情報を教えてもらおうと、岩城村役場(当時)に手紙を書いた。
ところが、返事は予想外に厳しいものだった。
「農業で生計を立て、住み続けることは簡単ではありません。」
もともと負けず嫌いだった古川さんは、「何が何でも住んでやる!」との思いがいっそう強くなり、奥さんの由希子さん(36歳)、お母さんの信子さん(64歳)とともに、見切り発車ともいえるかたちで島へ移住した。


――上島町に移住した決め手は?

「岩城に来る前は、京都で建築関係の仕事をしていました。最初から岩城島に決めていたわけではないんです。離島での農業に漠然と憧れていて、本当は沖縄の離島に移住しようと思っていたのですが、費用も含め色んな面で条件が厳しくて。たまたま遊びに来た岩城島のレモンが、普段何気なく飲んでいた焼酎に入っていたレモンだったと知って、「ここだ!」と。」


――“転がったみかん”に島の可能性を感じて

p-3furukawa.jpg 京都では生活環境の整った都会で何不自由なく暮らしていた古川さん夫婦。高級車を乗りまわし、ボタンひとつで快適な生活ができる高級マンションを借りて、贅沢三昧の日々。由希子さんも冷暖房の完備されたオフィスでOLとして働き、都会暮らしに染まっていた。
 ところが島に移住した当初は住む場所の確保もままならず、風呂やトイレのない“納屋”生活という厳しいスタートだったが、農業研修中の“偶然の出来事”が、岩城での起農に可能性を感じるきっかけとなった。

「農家で研修を受けていた時、農家の方が運転する、みかんを満載した軽トラックが横転したんです。近くにいた僕たちが一緒に拾ってあげたんだけど、もう売れないから君にあげるわ、とタダで全部いただきました。
転がっただけで傷のないみかんを自分の軽トラックに積みなおし、とりあえず故郷の京都まで売りに行こうと考えました。路上販売しながら“岩城島ではこんな美味しい柑橘ができるんだ”と僕の情熱を伝えると、みかんが飛ぶように売れたんです。」
 島の人にとっては無価値だと思われていた、荷台いっぱいのみかんが、あっという間に完売した。
「やり方によってはビジネスとして成立するんじゃないのかと確信を持ち、首都圏や関西圏に販路を開拓していった結果、今がある。だから僕の原点といえるのは、この“転がったみかん”なんです。」


p-4furukawa.jpg――個人的に農業体験も受け付けていると伺いましたが。

「特別なメニューをそろえているわけではなく、僕たちが普段している、日常の農作業を手伝ってもらいます。都会から来た方は「もてなしてもらおう」と考えているわけではないので、そのほうが新鮮味があっていいみたいですね。だから連絡さえいただければ基本的にはいつでも体験できますよ。リピーターも多く、若いご夫婦が多いです。」


――どのような方から問い合わせがありますか。

「農業を志す若い世代の方や、農的暮らしを希望する方。島暮らしをしてみたい方など様々です。都会の方は、自然に触れ合うことで癒されたいという気持ちが強いのではないでしょうか。例えば島での日常は、ウグイスや野鳥のさえずりの中で野菜を収穫したり、土をいじったりといった環境です。僕たちには当たり前の環境でも、都会の日常はバスや電車の騒音ですから、それだけで癒されるのだと思います。」


――島の活性化を目指して、NPO法人を設立すると伺いました。

「この島も高齢化の波が容赦なく押し寄せています。後継者が少なく、耕作放棄地や空き家が増えている現状を考えたとき、地域資源を有効に活用することで、少しでも過疎化に歯止めをかけ、島を元気にすることができればと思い、12名の賛同を得て設立準備中です。グリーンツーリズムや観光にも力を入れたいと、“岩城丸ごと収穫ツアー”を考えています。これは年間を通して季節の野菜を収穫体験し、収穫した野菜をツアー客が買っていくイメージです。
都会からのお客さんは農業を身近に感じていただけるでしょうし、地元農家の方にとっては収穫から販売を都会の人に任せることができるため、労働力の軽減につながり、なおかつ利益に結びつく仕組みです。行政が苦手だと思われる、きめ細かな支援をNPOが引き受けることで、成功事例を積み重ねたい。」

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(京都の料亭に届けている、こだわりのサンチュ畑の前で)

――これから移住を考えている人にひと言アドバイスをお願いします。

「本当に移住を考えているのなら、その地に足を運んでみて、地元の人の話を聞くこと。これに尽きます。気候やそこに住んでいる人の気質などは、インターネットでは分かりませんから。」

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(平成20年6月15日、池袋で開催された農業人フェアに出展)


「農業で飯は食べられないのに、よくやるな」移住した当初はこう言われ続けたという古川さん。
「農業が厳しいことは百も承知。消費者が求めるものをいかに効率よく作るか。ひとつひとつ試行錯誤を繰り返しながら、小さな成功体験を着実に積み重ねることで、考えて儲ける“脳業”をー」
 “農”業を“脳”業へと昇華させる仕組みを模索し続けている古川さんからは、島を元気にしたいという強い気持ちと、農業に賭ける熱い思いがひしひしと伝わってくる。

 この島で暮らしてみたい-。岩城島へ何度も足を運んでいるうちに、都市部の便利な暮らしにはない、島ならではの魅力に惹かれていく人が増えている。
 それは、島に暮らす人々が連綿と紡いできた伝統と、新しい風を吹き込んでくれる多くの移住者との融合から生まれた、この島にしかない風土なのだろう。

-PROFILE-
古川泰弘さん(39歳)、由希子さん(36歳)、信子さん(64歳)
2003年に京都府からIターン
ホームページ http://www.k2.dion.ne.jp/~lemon-en/
ブログ    http://blogs.dion.ne.jp/nengo/

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